詐欺データを信じてしまわないために・・・
少し期間が空いてしまいましが、前回はEA詐欺にあった話を書きました。
思うに、その時私が詐欺にあってしまった原因を突き詰めると、公開されているEAのデータを信じてしまったということが挙げられます。
いま思うと、そのデータはMT4の履歴からトレードで勝ったところを中心に切り貼りしたデータだったか、あるいは適当にエクセルか何かで"優秀なEAのデータ"風の数値を作っていたのだろうと推測しています。
1年以上の履歴があったとはいえ、簡単にそんなデータを信じてしまった自分に腹が立つんですが、これ以上どうこう言ってもしょうがないので、ここではこれを教訓に詐欺EAを掴まされないためにEAを選ぶ前に注意すべき点について書いておこうと思います。
詐欺EAを掴まされないための2つの条件
詐欺EAをつかまされないための主な条件としては、2つあると思います。
一つ目は、①バックテストが正しい条件のもとで実施され公開されていること、そして二つ目は、②正しい形式でフォワードテストが公開されていること、です。
バックテストについてもフォワードテストにしても過去データか直近データ(リアルタイムも含む)かの違いはあれど、要はEAの取引履歴ですね。
そんなEAの取引履歴をちゃんと公開していることが重要になってくるわけなんですが、単に公開しているだけでは駄目で、正しいやり方で公開しているかどうかがポイントです。
それが分かってなかったんで、私は騙されてしまいました・・・。
バックテスト公開の正しい条件とは?
今の私だったら、販売されているEAが信用できるかどうかは、取引の履歴を一定の形で提供しているかどうかで判断します。
例の詐欺EAは毎日の取引履歴(フォワード)は公開していたものの、切り貼りしたような形で公開していたものだったので、フォワードの公開の仕方として「正しい形式」で公開されていたとは言えないと思います。
しかしそれ以前に、そもそもその詐欺EAサイトはバックテストを公開していませんでした。
これはもはやFX自動売買をやる人たちの常識になっていると思いますが、バックテストすら公開しないEAというのは論外、そんなEAは絶対にNGです。
MT4/MT5にはストラテジーテスターというそのEAが過去から現在までどのくらいの損益を挙げられたのか、取引回数やドローダウンやプロフィットファクターなどがどの程度の数値なのかというのをテストできる機能があります。
それなのにそれをテストせずに販売したり、バックテストのデータがあるのに公開せずにEAを使わせようとするのは、そのEAに何か問題が隠れている可能性が高いです。
ですので、バックテストの公開は当然の条件です。
その上で問題はバックテスト自体の条件ですね。
色々あると思いますが、最低次の三つの条件をクリアーしたバックテストが必要だと思ってます。
①長期間のバックテスト
②一定数以上の取引回数
③スプレッドが妥当かどうか
①長期間のバックテスト
まず①の長期間のバックテストについてですが、最低でも直近を含む10年間は欲しいところ。
1年とか3年、5年なんかでは、短すぎて、EAの性能を測るのに十分な期間ではないと思います。
できればリーマンショックや東日本大震災といった大きな出来事前後でのそのEAの挙動も見ておきたいという場合は、さらに長い期間が必要とされるでしょう。
ちなみに私自身のオリジナルEAについては、原則入手できうる限りのヒストリカルデータ(実際の通貨ペアの価格データ)の開始から直近の期間までバックテストを実施することにしています。
例えばいつも使用しているDukascopy社のヒストリカルデータでドル円なら2003年5月~直近までの期間でバックテストを実施します。
そうすると20年以上の期間になったりしますが、これだけの長期間なら様々なビッグイベントを含んでいるはずですし、そのEAの能力を見るのに十分な期間のはずです。
ただそこまでの期間でなくとも、10年以上あれば様々なイベントによるレートの変動がありますので、それくらいの期間を消化できていればEAの性能を見る上で問題ないのではないかと思います。
②一定数以上の取引回数
ただそうした長期間でのバックテストとはいっても、年間の取引回数が10回とか20回、全期間の取引回数が100回や200回いった極端に取引数の少ないEAだと信頼に足りるデータとは言えません。
目安として全期間で1000回以上もあれば問題ないかと思いますが、複数のロジックを含むEAの場合だと、1ロジックごとの取引回数を意識しておくことも必要です。
例えば5つのロジックを含むEAなのに、10年間で1000回の取引数ということは、1ロジック当たり10年間で平均200回しか取引数がないということになりますので、可能であれば1ロジック換算で1000回以上、つまり5000回以上の取引数は欲しいところです(いずれかのロジックだけに取引数が偏りすぎないよう注意が必要)。
③スプレッドが妥当かどうか
次に③スプレッドが妥当かどうかですが、これも「妥当」なスプレッドをどう考えるか、色々な見方があるかと思います。
業者によって、口座の種類によって、狭いスプレッド、広いスプレッドと様々です。
ただ明らかに狭すぎるスプレッドでのバックテストについては、信用するのを避けるべきかと思われます。
例えばドル円のスプレッドを「1」(0.1pips)に設定してバックテストをやっても現実味がないです。
極小スプレッドを謳う国内外業者は多いですが、実際のリアル口座ではスプレッドの拡大、スリッページ、手数料などの条件があるため、そうした表向きのスプレッドよりも平均的には広いスプレッドの場合がほとんどだと思います。
こちらは主な海外FX業者のスタンダード口座の平均スプレッドを比較したデータ(一部)ですが、ほとんどの業者が1.5pips以上となっています。
引用 https://fxroyalcashback.com/broker-comparison/spread-ranking/#FX
あくまで個人的な目安ですが、固定のスプレッドでテストする場合は、無料EA配布サイトのEA-BANKが出品EAのバックテストに課しているスプレッドぐらいの厳しい数値であれば、問題ないのではないかと思います。
以下は主要通貨ペアでEA-BANKが出品EAに課しているスプレッドです。
通貨ペア | スプレッド | ストラテジーテスターの設定値 |
USDJPY | 1.5 | 15 |
EURJPY | 2.0 | 20 |
GBPJPY | 3.0 | 30 |
AUDJPY | 2.5 | 25 |
EURUSD | 1.5 | 15 |
GBPUSD | 2.0 | 20 |
USDCHF | 2.0 | 20 |
参考:https://ea-bank.com/contact/
また近年ではTickDataSuite(TSD)というツールを使用して、実際のリアル口座と同じような変動スプレッドを利用してバックテストをするというのも珍しくないです。
この場合は1分未満のティックデータを使用し、手数料やスリッページの有無も設定できるなど、実際の取引をリアルに再現できますので、通常のスプレッドを固定して行うバックテストよりも信頼はできます。
ただし、TDSで変動スプレッドを使ったテストをやる場合でも、設定で最大スプレッドの上限を狭くするなどして成績が良くなるよう操作できますので、"変動スプレッド信者”にはならず、信頼できる根拠の一つぐらいに考えておいた方がいいでしょう。
バックテストだけで詐欺EAを見破れるか?
以上詐欺EAを掴まされないためには、そのEAについて、①バックテストが正しい条件のもとで実施され公開されていること、②正しい形式でフォワードテストが実施され公開されていることを指摘し、今回はその①について「バックテストが正しい条件のもとで実施され公開されている」の「正しい条件」というのはどういう条件なのかについて書いてきました。
その条件というのは
①直近を含む10年以上の期間
②1000回以上の取引回数
③妥当なスプレッド
とい3条件です。
999回の取引回数や9年半のバックテスト期間では駄目なのか?という疑問を抱かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまで上記の条件は目安です。
勿論999回の取引回数や9年半のバックテスト期間でも絶対ダメというわけではないし、ここから上はOKでここから下は駄目というのではありません。
およその目安として「10年以上の期間」「1000回以上の取引回数」という条件を書かせていただいただけで、数値的裏付けではなく経験的主観的な裏付けになってしまっているのは承知の上です。
そこら辺は各自でより信頼できると思われる期間や取引回数があれば、そちらを採用していただければと思います。
ただし、バックテストのないEAや極端にバックテスト期間が短かったり、取引回数が少ないのは勿論駄目で、詐欺EAとは言えなくとも高いリスクが隠れている可能性を疑っていただいた方がいいと思います。
さて、ここまで書いてきて、では(正しい条件下での)バックテストだけで詐欺EAを見破れるのかということについてですが、結論としては、見破れないということになります。
なぜなら商品Aという詐欺EAのバックテストと偽って商品BのまともなEAのバックテストを見せられたら騙されますよね?
バックテスト自体、期間を短くしたり、取引回数を狭くしたり、あるいはスプレッドを狭くしたり、あるいは今回は触れてませんが過剰最適化によって成績を表面上よく見せることは可能です。
詐欺とまでは言えないまでも、某サイトで販売されているEAの中にも、狭いスプレッドなどの緩い条件でバックテストやったり、5年以内の短い期間のバックテストを掲載していたりする販売者のEAも散見されます。
今回はそうした"正しくない条件"でのバックテストに騙されないようにするための「正しい条件」でのバックテストについて述べてきたわけですが、それをクリアーできても販売者自体が嘘のデータを貼ってこれがこのEAのバックテストですよと偽ったら、なかなか見破るのは難しいでしょう。
というわけで、バックテスト以外にも詐欺EAに引っかからないためのあるデータが必要になってくるわけですが、それがフォワードテスト、要は実運用での取引履歴データです。
それも私が騙されたような切り貼りみたいな形での取引履歴の公開では駄目で、②正しい形式でフォワードテストが公開されていることが重要になってきます。
しかし長くなってしまったので、今回は以上とさせていただきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。