「AI搭載EA」が増えた?
最近、「AI搭載EA」や「AI EA」という言葉をよく見かけないでしょうか?
Xなんかでもよく宣伝していますし、海外EAなんかでも「AI」を謳っているEAは多いです。
例えばこれは世界最大のEA出品サイトでもある「MQL5マーケットプレイス」で「AI」で検索したところですが、「○○AI bot」みたいなEAがずらっと出てきます。

引用:https://www.mql5.com/
ChatGPTなどの登場で、FXの自動売買も"AIがトレードを学習してくれる時代"になったように見えます。
しかし実際のところ、「AI EAは本当にすごいのか?」「普通のEAはもう時代遅れなのか?」この疑問を持っているトレーダーは多いはずです。
そこで本稿では、「AI搭載EA」と従来型EAの違い、そのメリットとデメリットを中心に解説してみました。
そもそもEAとは?
まず、EA(Expert Advisor)は、MT4やMT5上で自動売買を行うソフトウェア(プログラム)のことです。
多くのEAは、テクニカル指標(MA、RSI、MACDなど)や指定した時間帯などの条件をもとに「条件が揃えば売買する」というルールで動きます。
「AI搭載EA」とは?
では「AI搭載EA」とはどういうものか?
実は後述のように、「AI搭載EA」とは言ってもいくつかのタイプに分けられ、違いがあります。
しかしここではそういった違いを無視して、まずざっくりと「AI搭載EA」を定義するなら、過去の膨大なチャートデータを学習し「この形のチャートのとき、買えば勝てる確率が高い」と判断できるようになっているEAのことだと定義しておきたいと思います。
言い換えれば、相場状況に合わせて"自分で判断できるEA”だと言っていいかもしれません。
通常EAもインジケーターや時間フィルターで相場を分けてエントリーや決済の判断をしますが、それは一般的なトレードのロジックに基づいた判断と言えます。
しかしAIの判断はこれとは必ずしも一致せず、膨大なチャート学習からそうしたロジック(人間)では判別不可能な"勝てる"チャート形状を判断する点で、そうした通常EAが行うロジックに基づく判断とは根本的な違いがあります。
簡単に通常EAとAI搭載EAの違いを言うなら、
・通常EA:MAがクロスしたら買い(売り)
・AI搭載EA:過去に似たチャート形状で利益が出た行動を学習して買い(売り)を判断
という違いがあるわけです。
「AI搭載EA」の3つの類型
しかしながら、そんな「AI搭載EA」を既存のEA作成用のプログラム言語で開発しようとした場合、限界があるのも事実です。
というのも、EA開発に使用されるMetaTrader用のMQL4やMQL5といったプログラミング言語はトレードロジックの自動化に特化した言語のため、MQLの中で完結してAIモデル(例:ディープラーニング、Transformer、LSTMなど)を「学習・推論」させるのはほぼ不可能だとされているからです。
ただしAIを取り込めないというわけではなく、現実的な解決策として、次の3つの類型による取り込み方法が考えられます。
タイプ①Python連携
MQL5(MT5用のプログラミング言語)であれば機械学習・AIの開発に使用されるPython※を呼び出して予測結果をEAに反映させたりすることができます。
※事前にAIモデルを学習。Python側で最新データを取得・再学習・推論して結果を返します。
タイプ②外部APIサーバーを使う
AIを別の外部サーバーで動かして※、EAがそれを受信する(HTTP経由)ということもできます。
※EAはHTTP通信でサーバーへリクエストを送り、サーバー側AIが最新データで予測して返します。
タイプ③軽量AIモデルを数式化
学習済みモデル(例:線形回帰、決定木)をMQLに数式として埋め込むという方法もあります。
「AI搭載EA」の多くは「AI」を搭載していない?
以上3つのタイプの「AI搭載EA」を紹介しましたが、実際には「AI搭載」と宣伝している多くのEAがタイプ③の数式埋め込みタイプだと言われています。
このタイプのEAは、過去チャートを分析→最適パラメータを抽出→数式で埋め込みというやり方でEAが作成されています。
つまり「AI搭載」とは言うものの、実際にはEA内部でAIが"考える"のではなく、「AIがあらかじめ考えた式」をEAが再生するというのが正しいです。
多くの「AI搭載EA」は数式埋め込み型でロジックの透明性や安定性が高い反面、プログラム内部で最新のチャートを学習することはできず、精度を維持し続けるためには再学習が必要となってきます。
また、複雑なAIモデルにも対応しておらず、本格的な「AI搭載EA」を求めるのであれば、上で紹介した①(Python連携)や②(API連携)のタイプのEAを検討する必要があります。
ただし、③(数式埋め込み)のタイプのEAでも多くの場合事前に過去チャートの膨大なデータを学習してAIモデルを構築し、それを元に数式の形でMQLに落とし込んでいるため、AIが全く反映されていないというわけではなく、通常EAのロジックでは対応できない状況判断ができる能力を持つことは可能です。
その意味では③のタイプのEAについても「AI搭載EA」だと言うのは間違いではないでしょう。
「AI搭載EA」のタイプ別のメリットとデメリット
以上の3つの類型にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
例えばタイプ①であれば本格的にAI実装が可能ですが、Python環境のセットアッが必要で、MQL4(MT4)は対応していない、またリアルトレードで遅延が発生することがあるというデメリットもあります。
またタイプ②では本格的にAI実装が可能でかつ大規模な運用でも対応しやすいというメリットがある反面、通信遅延が発生する場合や、インターネット接続、サーバー管理が必要といったデメリットがあります。
更に言えば、この①と②のタイプではMT4/MT5のストラテジーテスターでのバックテストが不可能というEAの選択を行う上での大きなデメリットもあります。
これに対し、タイプ③の数式埋め込み型は軽量かつMQL4(MT4)にも対応していてバックテストも可能ですが、その反面AIの本格実装はできず、EA自体はAIによる過去の学習データが反映されるだけに留まります。
| タイプ | AIの本格度 | MT4対応 | 最新データ の反映 |
バックテスト (長期検証) |
| 通常EA(MQLのみ) | ★ | 〇 | × | 〇 |
| タイプ①(Python連携) | ★★★★ | × | 〇 | × |
| タイプ②(API連携) | ★★★★★ | × | 〇 | × |
| タイプ③(数式埋め込み) | ★★ | 〇 | × | 〇 |
「AI搭載EA」に共通のメリットとデメリット
一方、これらのAI搭載EA全てに共通するメリット(※タイプにより差はあります)としては、通常EAのようなロジックを使用していない分相場に柔軟に対応できるという点が挙げられます。
また、人間の判断では気づかないような相場の特徴を捉えてトレードできるのも強みです。
一方、AI搭載EAに共通するデメリットとしては、通常EAが比較的ロジックの透明性があるのに対し、AI搭載EAがブラックボックス化し易いという点があげられます。
加えて学習データの内容により結果が大きく左右される点もデメリットです。いくらAIが膨大なデータを学習したとしても、実際にトレードする相場の状況からかけ離れたデータであれば、AIの強みが生かせなくなる可能性が高くなります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 相場の変化に柔軟に対応できる | ブラックボックス化しやすい |
| 人間の気づかない相場の特徴を捉えてトレード できる |
学習データによって結果が左右される |
通常EAのメリットとデメリット
これに対し従来型の通常EAの最大の魅力は「理解しやすさと再現性」です。
トレードロジックにインジケーターやローソク足、時間フィルターなどを使用していて明確なので、検証がやり易く、パラメータ調整も比較的容易です。
勿論中にはロジックが完全非公開の通常EAもありますが、多くのEAは少なくともロジックの概要を明らかにして利用できるようにしているため、その点では利用者側にとっての不安も少なくなります。
またMQL以外の言語との連携や外部サーバーとの連携が必要なAI搭載EA(タイプ①②)とは違い、MT4/MT5(MQL)環境で完結でき、比較的動作が安定的で軽量なのも通常EAを利用するメリットです。
その反面、既存のロジックに依存することの多い通常EAは、相場の変化への対応力ではAI搭載EAに劣ることもありえます。
また相場に応じたパラメータの調整も求められることも多く、一定の相場でしか勝てないということも少なくありません。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ロジックが明確で検証しやすい | 相場の変化に対応しにくい |
| MT4/MT5環境で完結できる | 相場の変化に合わせてパラメータの調整が必要 |
| 安定動作・軽量で扱いやすい | 一定の相場でしか勝てないことも |
EAを選ぶときに見るべきポイント
通常EAの場合、長期的に利益を挙げ続けられるEAというのは多くないというのが現状です。
また「AI」を謳っているEAに関しても、長期で勝ち続けているものがあるかどうか不明です(※今回はリサーチ不足ですので「不明」とさせていただきます)。
実際具体名は挙げませんが、「AI搭載EA」でも明らかにマイナスになってしまっているEAもあるし、プラスにはなっていても途中大きなドローダウンを起こしているEAを見たことがあります。
MQL5などに出品されているような海外EAの場合は高額なEAも多く、もしかすると長期で生き残っているEAもあるかもしれませんが、「AI」だからずっと勝ち続けられるかというと正直疑問です。
実際のところ、EAを選ぶ際には、EAの「AI搭載/非搭載」よりも、次のポイントの方が重要ではないかと思います。
・バックテスト期間が長期(最低10年以上)で公開されているか
・フォワードテストが公開されているか
・ロジックの概要が公開されているか
・リスク管理(損切り・ロット制御)が明確か
・アップデートやサポートが継続されているか
上記はある程度自動売買をやっている人には自明のことかもしれません。
やはりどんなにAIが賢くても、「データの透明性と信頼性」がなければ、長期運用は難しいのではないでしょうか。
EAより安心?AIで自動売買をしたい場合のEA以外の選択肢
とはいえ、既に仕事や趣味などでChatGPTやGeminiなどのAIを利用している人だと、やっぱりAIは凄い、投資を任せてみたいという方も多いのではないかと思います。
そこでそんな場合には、海外マーケートのよく分からないEAやSNS上の怪しいEAに投資を一任するよりも、より安心できる別の選択肢もあります。
例えば、当ブログでなんどか取り上げているロボアドバイザーのROBOPROであれば、AIによる膨大な市場データの活用をベースに、徹底したリスク管理を行いながら年利10%ほどの利益を目指す堅実な運用の機会を提供してくれます。
ソフトバンクグループ傘下の企業が運営し、投資シミュレーションや毎月の運用成績も公開していますので、そうした部分での安心感も大きいです。
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まとめ
以上「AI搭載EA」について見てきました。
AI搭載EAといってもMT4/MT5用のプログラミング言語であるMQLだけでは限界があり、AIの取り込み方次第でAI搭載EAも3タイプに分かれるという点、またそれぞれにメリットやデメリットがある点を指摘しました。
さらにどのAI搭載EAにも共通のメリットとデメリットを指摘した上で、従来型の通常EAと比較しました。
私見を言えば、相場への柔軟な対応、従来のロジック(人間)では判断できないトレード判断の可能なAI搭載EAは魅力はあるものの、現時点ではAI搭載EAの絶対的な優位性は見いだせないというのが感想です。
勿論今回海外製のものも含め多くのAI搭載EAを調べたわけではありませんので、この考えは間違っているかもしれませんが、少なくとも自分が見てきた範囲では従来の通常EAの中にも5年10年と最高益を更新し続けているEAは結構ありますし、逆に「AI」を冠するEAで成績の振るわないEAも複数あります。
利用者として大切なのは、「AI」かどうかでEAを判断するのではなく、AI搭載EAのメリットやデメリットや従来のEAとの違いを理解しておくこと、またEAを選択する際はAI搭載EAであれ通常EAであれ長期のバックテストやフォワードの実績等の要素を重視するといったEA選びの基本を押さえておくことだと思います。
とはいえ勿論全てのAI搭載EAを否定しているわけではありません。
今後AI搭載EAが増えてくることは間違いないと思いますし、近い将来EAだけでなく当たり前のようにAIと外部連携が可能なMT4やMT5にとって代わる新プラットフォームやそれに対応する自動売買のスタイルが登場して主流になってくる可能性も十分ありうる話です。
当ブログでは今後も引き続き、AI搭載EAは勿論「AI投資」自体に注目し、皆様と情報共有していければと考えています。