はじめに:なぜ今「入出金規制」が注目されているのか?
海外FXの利用者の間で、入金や出金が今後できなくなるのではないかという不安が広がり、SNS上でも「海外FXはオワコン」などという言葉が飛び交っています。
というのも、今後海外FXが大きく影響を受ける規制が具体化してきているからです。
ただこの海外FXの規制議論ですが、ちゃんと理解するには、
1.入出金ルート(資金決済法)の規制
2.海外FX業者本体(金融商品取引法)の規制
という別々の2つの問題として分けて見ていく必要があります。
現段階で海外FX業者が規制の影響を受けることがはっきりしているのは1の入出金ルートの規制になるわけですが、2の海外FX業者本体への規制についても今後大きな影響を受ける可能性があります。
ただしこの両方を一度に論じるとかなり長くなって混乱してしまいますので、今回の記事ではまず1の「入出金ルートの規制」に絞って解説していきたいと思います(※今回は「前編」です。次回「後編」に続きます)。
海外FXで使われてきた国内銀行振込ルート
日本居住者向けの海外FXでは、長年以下のような入金スキームが使われてきました。
- ユーザーが国内銀行口座へ振込
- 収納代行業者が受け取る
- その資金を海外FXブローカーに送金
- ユーザーが海外FX口座で取引開始
見た目は単なる国内銀行口座への振込ですが、実際には第三者業者による海外送金が発生しています。
この仕組みが、2025年の法改正により問題視されるようになりました。
なぜ2025年に国内振込ルートが規制対象になったのか?
2025年6月の「資金決済法改正」により、次の点が明確化されました。
・国内で資金を受け取り、海外に送金する行為は資金移動業である「為替取引」に該当
・そのため「資金移動業」の登録が必要
・無登録で同様の行為を行う業者は継続が困難になる
つまり、「国内受取+海外送金」を組み合わせたこの「クロスボーダー収納代行」は法律上資金移動業(為替取引)として扱われるため、「資金移動業者」の登録が必要となるわけですが、無登録で同様の行為を行う業者が存在しているため、規制対象となってくるわけです。
参考:
法律事務所ZeLo
https://zelojapan.com/lawsquare/59115?utm_source=chatgpt.com)
規制の背景:オンラインカジノ・詐欺スキーム・国際的圧力
「クロスボーダー収納代行」が規制対象になった背景として、金融庁・金融審議会の資料では次が挙げられています。
・国際的なマネロン対策強化の流れ
・FSB(金融安定理事会)が、クロスボーダー送金のリスク管理を各国に要請
・無登録の収納代行が 海外オンラインカジノや海外出資金詐欺で悪用 され、マネロンや利用者被害の温床となっていたこと
こうした"無登録の送金スキーム"を抑え込むプロセスの中で、同じルートを利用してきた 海外FXの入出金も影響を受ける可能性が高い と見られています。
参考:
金融庁
https://www.fsa.go.jp/common/diet/217/02/setsumei.pdf?utm_source=chatgpt.com
登録要件が厳しい!無登録の収納代行業者は今後継続が困難に
改正資金決済法では、クロスボーダー収納代行が 実質的に送金業務(資金移動業) に該当すると整理されました。
そのため、同様のサービスを行うには資金移動業の登録が必要になりますが、この登録要件は非常に厳しく、多くの業者は満たせません。
例えば資金移動業として登録するには、次のような条件を満たす必要があります。
・株式会社又は外国資金移動業者であること
・外国資金移動業者にあっては、国内に住所を有する代表者がいること
・財産的基礎を有すること
・資金管理体制、内部管理体制が整っていること
・過去に処分歴がないこと
・役員が不適格者でないこと
参考:
サポート行政書士法人 https://www.shigyo.co.jp/search_post/kinyu/remittance/youken_sikinidougyou/?utm_source=chatgpt.com)
財務局
https://lfb.mof.go.jp/kantou/kinyuu/pagekt_cnt_20250516001sikinidou.html?utm_source=chatgpt.com)
これらの要件を全て満たすのは難しいため、実際に登録できる収納代行業者は極めて限られ、多くは撤退するのではと見られています。
結果として、海外FXでも国内銀行との間の仲介手段として利用されてきた 無登録の収納代行業者は今後継続が難しくなる可能性が高い と見られ、これが SNS 上で「海外FXオはワコン」と言われる理由の一つになっているわけです。
今後の海外FX入出金ルートのリスク比較
改正法は公布から1年以内に施行されるため、2026年前半頃には無登録の収納代行業者への規制が本格化すると考えられます。
今後の海外FX入出金ルートをリスク別に整理すると次の通りです。
安定性が高い
・国際銀行送金
・暗号資産(USDT、USDC、BTC等)
状況による
・クレジットカード
・電子決済サービス(bitwallet等)※ただし国内振込併用型は規制対象
高リスク
・国内銀行振込
・国内振込を併用するウォレット
まとめ:国内振込ルートは今後ほぼ使えなくなる
これまで利用されてきた国内銀行振込 → 収納代行 → 海外FXというルートは、無登録の収納代行が介在する以上、法制度上、今後は継続が困難と考えられます。
したがって、海外FXの入出金手段は国内振込を介さない方法(USDT/USDC、国際銀行送金など) が中心になっていくと見られます。
ただし、代替手段と見られる入出金方法もそのメリットやデメリット(リスク)があります。
それについても触れていきたいのですが、長くなってしまいましたので、この続きは次回の後編記事で解説したいと思います。
